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認知症は環境要因で防げる? ほのぼの研究所設立10周年記念講演会

本日は、前々職からお世話になっている、大武美保子(研究室リンク)さんが代表を務める「ほのぼの研究所」のNPO法人10周年記念講演会にお誘いを受け、行ってまいりました。

FBではつながっているものの、JRM編集委員会以来なのでかなりご無沙汰しておりましたが、覚えていてくださったのがうれしい限りです。

梅雨明けか!と思うほど暑い一日でしたが、柏へ。。。

本日の記念講演は2題目でした。

まずは、千葉大学予防医学研究センター教授の近藤克則(研究室リンク)さんによる「認知症になりにくいまちづくりーゼロ次予防を目指してー」でした。

対話形式で話をされており、わかりやすい講演でした。

先生のおっしゃるのは、認知症、うつ病などをはじめ、病には環境要因を改善することで、発生率を下げることができるのではないかという問題提起です。
また、先進国においては、日本の一日の塩分摂取量は多すぎるというデータもおどろきでした。たとえば、塩分摂取量を減らすには、自己責任としての、自炊時の塩分量を減らすという方法があります。しかし、全体としてそれは2割に過ぎず、残りの8割は加工食品や調味料で摂取しているというデータを示しており、それらから塩分を減らすことで、本人の努力はいらずに塩分量を減らすことができるということでした。また、減塩食品についてはほとんどの人は気づかないという結果も示しておりました。

これは環境を変えることで解決できるのではないかということを示しています。

そうしたことから、認知症やうつ病に関しても環境要因を改善させることで、住むだけで健康になれるまちづくりにいかせるのではないかという点に着目した研究の紹介でした。

ポイントとしては2点

  1. 認知症になりにくいのは一日の歩数が多い街づくり
  2. スポーツなどグループ活動が多い街づくり

当然といえば当然の結果ですが、車が移動手段の地方よりも都会の人のほうが一日の歩数は多く、スポーツなど一人ではなくグループに参加しての活動が多いほど、会話が生まれ、認知症やうつ病になりにくいというデータを示しており、この結果をコミュニティー全体で考えていけば、全体としての健康につながるということです。

ここで、なるほどと思ったのは、男性は単にグループ活動に参加するのではなく、幹事など役割を持っている人ほど認知症になりにくいという結果でした。女性はそこまでの差はないですが、男性は有意な差が表れているとのこと。ただ、この結果は現時点のひとつの結果であり、女性が今後ますます活躍する社会になってくることは確実なので、この男女差は次第になくなるのではないかと思います。ただしこれは個人的な感想なので、講演では述べておりません。

つづいて、大武先生の「防ぎうる認知症にならない暮らしを支える共想法」は、認知機能を刺激して、行動する暮らしをどうやって実現するかということに対する実践法です。

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自身の工学分野(人工知能、ロボット)の経験を活かして、実際に実践研究までやっており、この活動が広がることでより良い暮らしが実現できそうだと感じました。若いうちは、いろいろな行動を比較的にとりやすいのですが、どうしても年齢を重ねるごとに「やれることだけやる、できないことはやらない」という思考になってしまいがちになるということに着目してそれらを楽しく改善できる手法を目指しているのです。

方法としては、何かのテーマを決めて、グループで実際に街にでて、写真をそれぞれ撮り、各人の写真についての1分程度の説明のあと、ほかの方から感想などを2分程度で簡潔に述べるというやり方です。その際には、発言量を人工知能で測り、進行役をロボットが務めることで、人間ではなかなか気兼ねする司会進行をうまく調節させるという方法です。人数や写真の枚数によって時間は調節できるのですが、参加者全員を会話に参加させるというのがポイントとのことでした。

これは人間心理をうまくついていると感じます。実際の人間の場合は仕切るのはよほどのプロやまったく関係性がない方でないと難しいと思います。そこをロボットが仕切ることで有無を言わせず、議論を平均化できるのです。

最後には、各人の写真をクイズ形式で誰が撮ったものかを答えるということまでしており、そこで短期記憶力へ刺激を行うのです。

今後、いよいよ全国展開へ向けての事業化も検討段階に入りつつあるということなので、都内だけではなく、地方でも展開することが期待されています。

今日はいい話を聞けました。

この話をサイエンスカフェでもやってもらいたいですね。

写真が司会ロボットの「ぼの君」5号機です。最初はお地蔵さんかと思いましたが、笑。

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最後になりますが、NPO法人設立10周年、

誠におめでとうございます!